先駆村/明日襷-asitaski-/日本の祭り [宮城県石巻市雄勝地区桑浜]白銀神社例大祭 

先駆村/明日襷-asitaski-/日本の祭り

僕らが未来へ残していける風景を考え、学ぶ。明日へつなぐ僕らの襷。明日がもっと好きになる。アシタスキ。日本の祭りや文化,人々を動画や写真,文章で紹介していきます。

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僕のありがとうをもう一度雄勝へ 7

石巻に向かっている、真夜中だ。

もう何度通ったかわからないいつもの道。何度通っても、遠い。

眠いが、今日は日帰りだ。もう、今日しかない。



石巻駅に9時だったと思う。

井波先生との待ち合わせ。



僕は早めについていた。井波先生との再会だ、桑浜へ行くのは2回目。

やっと実現した一歩だった。

2月15日

前回の会津から約2ヶ月経っていた。

4月28日のお祭りへ向け、スケジュールは迫ってくる。

神輿の状態も踏まえると、時間がないのはみなわかっていた。

きっと一番わかっていたのは先生だろう。

次の日も予定がありながらギリギリの中訪れてくれた先生にただただ感謝します。



先生と僕は二人エスティマに乗り桑浜に向かった。

2月の雄勝に雪は残ってはいなかったが、まだ寒い。




文久3年(1863年)の製作の記録が残っている以来、一度山形に修復に出しただけで、今回の修復は2回目だ。

150年の歴史の中で2回目。

この瞬間の最初の1ページは、町の人にとっては大事件だろう。


もう一度漁師の運転する軽トラで、僕らは山道を下った。

この時もすでにたくさんの人が神社には到着していた。


神輿庫を空ける。

神輿には大きな布がかぶせられている。

 
 とにかく大きいですよ。


先生にはそれだけを伝えてあった。

軽トラで通った山道はやはり無意識に神輿の大きさを錯覚させる。


 これです。


神輿の全貌が見えた。

やっと先生に来てもらえた。僕にとっても嬉しい瞬間となる。


先生は採寸したり、細かい部分の写真をたくさん撮っている。

前回わりとじっくり見たつもりではあったが、先生とともによくよく見るとやはり細かい傷みは多い。


漆の状態や、下地。

そんなところも含めて確認していく。

先生は漆を一部はがして、ライターで燃やす。


 ちゃんと漆だ。


正直、先生の目でも化学塗料なのか漆なのかは見ただけではわからないらしい。

こうやって燃やしてみることで確実にわかる。

漆の匂い、といわれてもあまりなじみはないのだが化学塗料の匂いではなかった。


本物の漆がきちんと塗られていた。

 なるほど、、


僕らは 憩いの家 に戻った。

憩いの家は桑浜字羽坂にある集会場だ。

建物はわりあいと新しく、きれい。


僕たちが戻ると、ごちそうが用意されていた。

浜の人の精一杯の気持ちであった。


たくさんの貝、ウニ、魚。

僕と先生は会長さんの前に招かれ、最大限のもてなしを受けた。

会長さんや浜の人達のたくさんの気持ち、震災前の祭りを復活させたいという思い。


浜の人達は楽しそうに宴を囲んでいたがその空間には人々の多くの思いがあふれていた。


 先生、本当にお願いしますね。


何度も何度も重ねられる言葉。

浜の人達の思いは強い。


僕らは最高のもてなしを受け、先生とともに憩いの家を後にした。

会長さんや何人かの顔なじみの役員さんと固く固く握手を交わした。



僕らは仙台へ向け車を走らせた。

帰り際先生と様々な話をする。

今回の仕事は正直、先生にとっても簡単ではない。

もうやるしかないよね、と言ってくださっていたが僕も信じるしかなかった。




今度雄勝に行くのは、神輿を取りに行く時だ。


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  1. 2013/06/07(金) 22:16:07|
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僕のありがとうをもう一度雄勝へ 6

会津若松。


雪深い里だ。町の中でも一晩で真っ白になる。

古く細い町並みは歴史と人の営みを感じる。


ものづくりの文化が多く残り、会津漆器、藍染めの工房が町に普通に残っている。

ほのかに照らされた冬の会津の建物はどこか艶かしい。


僕らはその中にいる。

会津の町を作るディープなメンバーと深い歴史とその歴史と遊び心を交えたこれからの会津を肴に地酒を酌み交わす。


 話は、聞いています。

井波先生。

 実際に見ないとわからないってのが正直なところかなー、でも多分なんとかなるんじゃない?
 今すっげえいそがしいんだけどね 笑

こんな感じ。


正直あまり深く話は出来なかった。先生は忙しいようで、すぐ帰ってしまったからだ。

でも握手は出来た。

僕はこの握手で何度も人と繋がってきた。


 どうしても、直したい。祭りがやりたい。

その思いが伝われば。


僕らは会津若松を後にした。

その夜は友と夢を語りあった。肴は、尽きない。


  1. 2013/06/07(金) 21:04:55|
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僕のありがとうをもう一度雄勝へ 5

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宮原克人先生。

筑波大学芸術学群、木工の先生だ。
先生は木曽の漆職人の家の生まれ。

生粋の漆師。

坊主頭でいつもニコニコしている先生に久しぶりに連絡してみる。
もともと先生との縁は仲良しの同級生の担当教官だったところからだ。

彼女は木の木目を様々な糸で縫う、という作品を作っている芸術の生徒で、現在横須賀佐島に在住し活動中だ。

以前雄勝の石に漆をぬったらどうでしょうかと相談したことがあった。


 雄勝の神輿、直せますかね?


物語は進行する。ここで終わったら、そこまでなのだ。


「宮原先生

お久しぶりです、藤原です。

実は石巻雄勝町で、被災しながらも残った神輿があるのですが、漆がはがれてしまい直すことができるのかどうか見て欲しいと言われたのですが僕はあまり漆の知識がなく実際に見たとしてもわかりません。

そこでもしよければ先生にご同行していただき様子を見てもらえないかと思うのですがどうでしょうか?

出来れば今月中に行ければよいのですがと思っているのですがご検討いただければ幸いです。

よろしくお願いします。

藤原」


ここに原文がある。

今見返すとあまりに不躾で唐突だった。


逃してはいけない一瞬は音もなく過ぎ去って行く。




先生の答えは、こうだった。(抜粋)


「藤原君

 返信遅くなりました。

 芸大の先輩で会津大学短期准教授の井波先生に、この件を伝えました。
 神輿を見て判断する事は僕でもできそうですが、
 筑波には、漆の講座もなく、職人さん達もいません。


 今できそうな事は、宮原と井波先生で現場に伺い、
 調査しておくということでしょうか。

 神輿の写真等があったら送って下さい。」


運命の矛先は会津を指し示していた。


会津は無二の友達のいる場所だ。

縁が少しづつつながっていく。


写真を送り、井波先生と連絡が取れると僕は会津へと向かうことになる。


それもまた突然だった気がする。

僕はその時東北にいて、福島県立博物館学芸員の先輩が呼んでくれた。


 漆の芸術祭の報告会があるんだけど、井波先生も宮原先生もくるよー、来れば?


 行きます!


万事こんな調子だ。

奇跡は待っていても起こらない。

僕はどうしても井波先生に会いにいく必要があった。



初めて訪れる県立博物館。もう雪が舞っていた。

僕は友人谷津君に連絡し、合流して一緒に参加することにした。


 久しぶり、また太ったな!

あいさつはいつも同じだ。学生時代円盤投げを競技にしていた彼の体はいつみても大きい。

僕の訪問はほとんど突然だが、いつも快く家に泊めてくれる。

大事な仲間だ。


宮原先生がいた。僕がくることは知らなかったようだ。


 あれ?どうもどうも、久しぶり!


会津での再会。連絡はしていたが会ったのは1年以上ぶりとなる。


 井波先生はあとでくるみたいだよ!


井波先生は公演中に来ていたのだが終わってすぐ帰ってしまった。

ここまで来て話せないのはあんまりと、宮原先生が電話をかけてくれた。


 終わった後の飲み会にちょっと行きますー!


先生に会える。

僕も友人も飲み会に誘われて混ぜてもらうことができた。

ただし二人とも車なので飲むのはウーロン茶だ。



会津、むぎとろ。



なんとも風情漂う店の二階が会場だった。

一階は地元のおじちゃんおばちゃんが徳利を片手に盛り上がっている。


むぎとろの名物はその名の通り麦とろご飯だ。

出てくる料理は会津の郷土料理ばかり。

 
 食べてみなんしょ
 

と言いながらビールとともに華やかではないが大将の心がこもった料理がたくさん運ばれてくる。

机を囲むメンツも会津に根差したひとくせありそうな人ばかりだ。

井波先生に会う前に会津弁が飛び交うその空間を楽しんでいた。



話題は会津、漆の芸術祭の今後について。


漆の里、会津。ここに雄勝の神輿を持って来れるのか。




井波先生が、来た。
  1. 2013/05/23(木) 19:14:35|
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僕のありがとうをもう一度雄勝へ 4

[UNSET]



雄勝の帰り、僕たちは嬉しいお土産をもらった。

20個近いアワビだ。

 
 今年はあんまりとれなくてねえ、これだけだけど。


僕らのために、船を出してわざわざアワビを取ってきてくれた。


 よろしくね。


固く握手をして、僕らは車を走らせた。


雄勝。誰もが一度訪れるだけでその魅力にとらわれてしまう場所だ。
全て流されてしまったけれど美しい海があり、山があり、当たり前の人の営みがある。
決して非日常の珍しさや刺激に魅力を感じているのではない。
海外旅行や観光地にいった感覚とはあまりにも違う。
僕らは祭礼復活の登場人物であり、ともに考えるメンバーなのだ。



僕に役割が与えられた。




神輿の修復、祭礼の復活。

たくさんの人の思いが集まれば奇跡は起きる。僕はそれを知っていた。



今日出会った人達にお祭りを通じてもっと元気になってほしい。
会長に最高の祭りをプレゼントしたい。


そんな思いを胸にとっても爽やかな気持ちで東京まで走っていった。
一緒に行った仲間は疲れていたようだけど、みんなずうっと笑っていた。


時々真面目な表情になり、今後を考えた。
東北で出会う人達は誰もが笑顔で迎えてくれる。
だけどみんな町を失い、大切な人を失い、生活や家を失った。


そしてみんなが楽しみにしていた祭りさえも奪っていったのだ。


僕はお祭りが大好きだ。


お祭りが大好きだから、神輿が大好きだから、奪われる悔しさや悲しさが苦しいほどに理解出来た。


ピカピカになったお神輿。
神楽舞台。
たくさんの人が神輿に集まり、3年前のお祭りを思い出し、大声を上げ、汗をかきながら担ぎ上げる。
周りにいる人はみんな笑顔で、子供からおじいちゃんおばあちゃんまで楽しそうにしている。


そんな情景が僕に浮かぶ。


最高に素敵なお祭りがしたい。


神輿自体の修復は漆の経験がない僕には出来ないから。




僕はお世話になっている漆の先生に連絡してみた。








  1. 2013/05/21(火) 14:47:59|
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僕のありがとうをもう一度雄勝へ 3

白銀神社の本殿は驚くほど立派だ。

田舎の小さな神社とは思えず、とてもきれいに整備されている。
ここの人達が本当に大事にしているのがすぐにわかった。僕はこういう場所がとても好きだ。


神輿の小屋は本殿のすぐ隣にある。閂がかけられ、役員のおじいちゃんが開けてくれた。

神輿庫を開けるのも久しぶりのようだ。地元の人はどこか嬉しそうでもある。


比較的新しい木の建造物だがしっかりと作られた観音開きの扉を開くと、布にかぶせられた神輿がそこにあった。


 大きいな・・・。


最初の感想はそれだった。


神輿は想像していたものよりかなり大きい。布がかぶせられた状態でも伝わってきた。
あの険しい山道を歩いていくのだから、かなり小さめのものであることを無意識に想像していた。


布がはずされ、全貌が明らかになる。

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静かに佇む神輿。
秘境雄勝のまぎれもなく最突端である白銀岬にきらびやかな神輿がある事実に僕は単純に感動し、圧倒されていた。
そこには脈々と受け継がれてきた人間の気持ちが積み重なった深く豊かな歴史があった。
パワースポットという言葉では捉えきれない、この場所の力。
爽やかで力強いエネルギーの塊が神輿から風となって吹き抜ける。
僕にとっての大きな1ページへの扉でもあった。



一見してあまり古いものではなさそうだ。
というより、文久三年に納められたとの記録があるらしく(1863年江戸時代、薩英戦争が会った年だ)神輿自体は古いのだが一度補修に出したのが最近のようであり、本体は古いのだが表装はそんなに古くない。
屋根にベニヤが張られていたり中の柱がボルトでとめられていたりしている。
そしてこの神輿には芯柱がない。ボルトで止められているから成立する構造なのか、御堂の中は驚くほど空っぽだ。



破損箇所は主に欄干。
神輿を激しく揺さぶるため、どうしても鳥居や欄干に肩が当たってしまうようで、折れてしまうらしい。
何カ所か折れている部分や漆のはがれが見られた。

欄干だけでも数百の部品で成り立っている。
補修は大仕事だ。


 うーん、結構壊れていますね。補修となると全部分解して多分塗り直すことになると思うので簡単ではないと思いますが相談してみます・・・。


その程度の返事しか出来なかったが町の人はニコニコして祭りの自慢をしている。

 


 この道をさ、大きな声出してみんなで担ぐんだ。それで色んな家を回って神輿が暴れるんだ。チョーサイ、ヨーサイってね。




僕らは公民館でお茶を頂いたりして、町の様子やお祭りの映像などを見せてもらった。
浜の人達のお祭り談義が始まる。映像見て、この子はどこの子だとか、今はこんなに大きくなったとか。
あら、私が映ってるわ、楽しそうねえ、ここで転ぶんだよなー。

そんな言葉が飛び交っている。
映像から浜の人達に視線を移すと、みんなとても素敵な顔で祭りの様子を見ていた。


 本当にみんな楽しみにしていた大好きなお祭りだったんだなあ。


僕はこうやってどんどん心を動かされていった。




  1. 2013/05/14(火) 18:51:35|
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